野球少年を動かす『魔法のコトバ』

何気なく発した大人のコトバが子供にとって、魔法のコトバとして生き続けることがある。

「いいぞ!君、才能あるよ」

少年時代に言われたそのコトバがいつまで経っても彼らを酔わせていく。野球というスポーツに夢中になっていく魔法のコトバだ。少年達はそのコトバで、はにかむ様に笑う。そして少年達はそのコトバで自分は何者かになれるのではないか、と自分の人生に期待を込める。

20160813_172207

夢を育てる場所

この夏休みは、筆者の甥が学童野球をしている関係で野球関係のスケジュールが盛りだくさんだった。その内のひとつ。甲子園常連校への進学が毎年続く「神戸西リトルシニア様」に練習の見学をさせて頂いた。

神戸西リトルシニア http://www.kobe-nishi-ls.com/

甲子園出場経験のある監督・コーチをはじめ、トレーナー・食育管理の栄養士・父兄のサポートで、選手達は野球を通して高度な野球スキルと人間としての礼節を学ぶ。

20160812_165812 (1)

真昼のカンカン照らす時間から、太陽が少し陰ってくる時間までお邪魔し、練習をじっくり見学しながら監督さんと野球について話し、また甥っ子の練習まで見て頂いた。ここで育つ選手達が高校で活躍することはもちろん、全国の強豪校から欲されていることは、折り目正しい挨拶やその行動と目的意識がしっかりしている部分で窺い知ることができる。

神戸西リトルシニアの選手達は、その練習に少しも淀むところがなく、もちろん疲れてきてのんびりする時もあるが、それぞれの目的や役割に応じて一生懸命動いていた。

監督・コーチに自分のプレーをしっかりと見てもらい、褒めてもらいたい。その一方的な恋慕は子が親の愛情を一身に受けたい感情と似ている。

夏休みを利用して、卒部生達も練習のサポートに来ていた。彼らにとってはいつでも帰る場所であり、そこがただの野球練習クラブではないことの証拠に、人間を鍛える場所として、グラウンドは存在する。

後輩に伝えることを通して、また自分が忘れかけてしまった大事なものを思い出せるものがグラウンドや監督・コーチとの会話に潜んでいる。ここで厳しく長い時間を過ごした彼らにとっては、その時間こそが財産であり、その後の大学や社会に出ていくときにその財産の価値に気づく筈だ。

夢の場所『甲子園』へ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2016年夏、阪神甲子園球場では、第98回全国高校野球選手権大会が行われている。2016年の出場校はまだ発表されていないので、昨年の数値を参考にすると約3,900校の出場校の内夏の甲子園へ出場出来る数は、49校。その確率は約1%。99%の高校球児は涙を飲むことになる。その高校球児達はほとんどの場合、夢と呼ぶにふさわしい挑戦を早い人では小学生から始めていて、高校時代に活躍するには遅くても中学生から始めないと間に合わない。

※甲子園に出ていなくても活躍を続けるプロ野球選手はいるし、元巨人、現ホワイトレッドソックスの上原浩治は高校から野球を始めていて、中学時代は陸上競技をしていた。でもそれはまた別の話。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

甲子園

神戸西の練習見学の前に、甲子園に観戦に行った。筆者もかつての高校球児で、もちろん強豪校ではない3流高校球児ではあったが、ひとり俺の夢は甲子園に出場することだ、と言って周りに呆れられていたことを覚えている。

甲子園には夢が詰まっていた。老いも若きも球児のきびきびとした動きと球場を包む熱気に酔いしれていた。地が揺れる程の若者達の応援の声にエネルギーを感じ、青春のただ中にいる彼らと青春の外側にいる自分とのコントラストをくっきりと感じていた。球場にいたのは短い時間だったが、カラカラに乾くぐらいの日光干しを必要としていた自分には良い時間だった。

甲子園、夢のその先

甲子園を目指す球児達の多くが「魔法のコトバ」をかけられて、野球に夢中になっていく。彼らの夢は甲子園にある。甲子園に出場することにある。というのがまず最初のレイヤーだ。その後、甲子園で活躍することや大学・社会人・プロで活躍することなどは次のレイヤーになる。

大人になって考えてみると、何者かになれるかどうかは分からないし、それほど重要だとも思わない。ただ、野球の夢を目指した時間だけは、色あせず何度も見直すお気に入りの映画のように彼らを励まし続けるように思えてならない。

「魔法のコトバ」は思いのほか彼らを遠いところまで、連れて行く。

夜、家路に着くために高速道路を走っていると、ヘッドライトがキレイに見える。

野球場で見たカクテル光線は、僕らの胸のどこかにある。

そして、ベースボール・オブ・ドリームは何歳になったとしても僕らの、心の中にある。

野球をテーマにした記事ベースボール・ドリーム1日目の記事は下記

http://dream-navi.com/2016/08/12/『夢の中へ』ベースボール・ドリーム 1日目 /