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今いくつかのキャッチコピーを考えていて、

ふと、いつからこんなことをやっていたんだっけ?

と云う問いが去来した。

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私が今に繋がる夢の種を見つけた出来事について

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遡ること小学生時代。

同級生のあだ名をつけることや野原で友達と遊んでいて、新しく開発した遊びのネーミングを考えたり、国語の授業で感想発表にかこつけて笑いを取る為に架空の話を披露したり、、、という所から始まり。

今の仕事と繋がっていると明確に言える出来事は、中学3年の後期、生徒会副会長に立候補した時に制作したポスターにある。今思えば、あの経験がよっぽど楽しかったのか、腑に落ちたのか、大人になって違う仕事についても頭の片隅にあって、人生サバイバルの最後の最後の切り札として取っておいた才能(確信はなかったので宝くじの抽選発表前のバラくじみたいな存在)と言っていいが、それが奇跡的に開花してクリエイティブディレクターという仕事をしている。

生徒会選挙期間に下駄箱に張り出されるポスターに付けたキャッチコピーが

コピーライターとしての処女作 「とろける稲石」・・・※写真参照

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・・・・そのまんまやん・・・

・・・・意味わからんやん・・・

結論から言うと、副会長の選挙には当選する。

このポスターと選挙活動&選挙演説で当選することになる。

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選挙戦を戦う上で、まず下駄箱に張り出すポスター制作が必要だった。

推薦人は美術系の友人Hに頼んだ。Hとは家も近く、両親ともに良い付き合いをしてる幼馴染のような存在だった。企画会議と称して、友人Hの家に行き「あーでもない。こーでもない」と言いながらポスター企画案を考え、制作していた時間が宝石箱のようにキラキラと光り輝いて思い出される。

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とにかく楽しかった。

このポスターを見せた時の反応を想像するとちょっと言葉にできないほど密やかな喜びがあった。今でもあの制作していた場面をありありと思い出すことができる。

その時のイメージを20数年経った今でもひきづっている。ポジティブに言えば、あの感動と成功体験が僕のクリエイティブの種子として厳然と存在する。だから強い、厳しい環境においてもどこかで楽しめている。

その時こんなやりとりがあった。なんかインパクトが欲しい、とHに言った。企画会議中、Hはおもむろにオカルト情報誌『ムー』のあるページを開き、僕に見せ、こんな感じでいきたいんだけど、と言う。

うん、いいね。なんか気持ち悪くていいね。目立ちそうでいいね。

じゃあコピーはっと・・・とろける稲石でいこうか。。「うん、いいんじゃない」とH。

見たまんまではある。でも、普通の生徒会選挙用のポスター文言と言えば、「●●をよろしく!」や「会長立候補の●●です!」や「清き一票をお願いします!3年2組の●●です」のような感じで、直感的に「イケる!」と思った。これで受かる、と。

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自分の中での分析と計算があった。差別化、インパクト、実物イメージ(自分ビジュアル)とのギャップ。そういう感じでポスターを利用したかったので、自分のイメージをそのHはポスターデザインで具現化してくれた。また、そのポスター表現は受かった後の自分の活動につながり、「何か変わったことをしてくれる。面白いことをしてくれる」期待感を持たせるというブランディングにつながっていくことになる。ギアがカチッとはまって油がかかり、スムーズにエネルギーが連動していくイメージだった。

そのポスターの公開で、いい感じで話題を呼び、野球部主将、体育委員長という肩書きとのギャップも良かった。そして、選挙活動中には昼の給食時間に校内テレビ放送で推薦人とスピーチをするという機会があった。

放送室でビデオカメラの前に推薦人と二人で座って、決められた時間内で。
しかし約束の時間になっても推薦人が来ない。しゃーない、一人でいくか、と覚悟を決めたその時、彼は現れた。推薦人Hは給食当番の白衣のままで……

なにしよんねん!!

はじめはそう思った。時間的にも焦っている。インパクト、話題性。逆に面白い。そう思った。よし、これでいこう。行ってしまおう。瞬時に構成を考える。各教室内で給食を食べながらテレビ画面をどのように見上げるのか、その場面を想像して、どんな風に見えるか。

名前は推薦者の給食当番です。これしかしゃべらせない。給食当番から推薦をされた稲石です、と続ける。なんとなく、今までにない画が作れる。予定調和では面白くない。これが学校の顔である会長では不謹慎であるが、副会長はどこか人気投票的な部分もあるし、ふざけたことを真面目にやるギャップもいい方向に展開する。

放送終了後は、幾人かの教師からは非難されたが、若い担任は、良かった、面白いと応援してくれた。副会長は、勉強のできるNと一騎討ち。200票差を付けて勝利。

後日分かったことだけど、対抗馬のNも推薦者をその友人に頼んでいたという。僕は言った「ありがとう。選んでくれて」「いや、先に頼まれたから、それだけ……」とHは言った。し誘うのが遅れていたら結果は違ったものになったかもしれない。でも、たとえ後で誘っていたとしても僕を選んでくれただろうと今ではそう思う。

なぜか?その方がきっと面白いと思うだろうから。

デザインとコピーの渾然一体の表現。それが広告物であり、人の心を動かすクリエイティブ作品となる。そんな経験が今の仕事に繋がっている。その経験が今の自分の原風景としてある。制作の最中の苦悩、苦しみを乗り越えてキラリと光るコピーやデザインが表出してきた時のなんとも言えない幸福感。仲間との共同作業で得る喜び。そして結果に繋がり評価を得られたという満足感。それらの全部が好きで今も懲りずに続けている。もっと難しいことにチャレンジしたいとさえ思っている。

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この記事の元となる原稿の投稿は4年前になる。その時生きていたHは今はもうこの世にいない。僕とHは20代の頃、お互いの居場所を見つけることができなくて、モラトリアムの不安な気持ちを共有していた。いつか彼が「最終的には美術系、デザイン系の仕事に就くんだろうなぁ。。」と言ったことが思い出される。

現実的に考えれば、未経験での30代デザイナー就職は厳しいと思ったが、それなら僕が作りゃいいと思った。いつか僕が地元に戻ってきて、デザイン会社を作る。そこに彼がデザイナーとして所属する。もう一度、あの選挙ポスターを作った時の宝石箱のような楽しい時間を共有したいというのが夢の一つとなった。

現実的には友人Hのいない現世では叶えることができない夢である。でも、僕は今でも真面目にその夢を追いかけている。

あの時の楽しかったイメージを今も追いかけている。

 

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これから先の夢〜 I have a dream.

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コピーライターとしての仕事は、たくさんの情報や企業の方針、戦略を咀嚼して一文のコピーに集約する。感性や知識やスキルを爆発させるような仕事だと思う。

面白いことやちょっと変わった表現、インパクトのある表現をリアルなビジネスの中でほんの少しのエッセンスでも加えていきたい。仕事として求められる成果をきちんと出しながら、それでも時々は無茶なこともやってみたい。

今の夢は?と聞かれたら。「日本を代表するブランディングコンサルファームを作る」と答える。

シニカルな彼が生きていたら「アホや!またアホなこと言って」ときっと笑ってくれると思うから。

夢を叶えるため、ミッションを達成するために、Tokigara Design としてデザイン事業を始めました。